ベトナム語通訳者のアクセント
唐突ですが、私のベトナム語は「北部南部混じりアクセント」です。
9月下旬から約2カ月間にわたる長期案件が始まりました。この案件には複数の通訳がかかわっており、先日3名のベトナム語通訳者さんとお会いしました。3名とも在日15年~30年のベトナム出身です。歴史的背景から、在日25年以上の方にはベトナムで生まれ幼少期に一族で来日した南部出身者、在日15年~20年くらいの方は国費留学生として来日した北部出身者が多いように感じます。
3名もやはり上記のような経緯でそれぞれ来日された方々で、南部弁、北部弁を話されていました。そのうち北部出身の方からは「南部弁ですね」と、南部出身の方からは「でも北部弁っぽいわ」と言われました。これは私の中での「あるある」で、私はいつも「北部南部混じりアクセント/Giọng lai Bắc Nam なんです」と答えます。
私が大学で初めてベトナム語を学んだ時は先生がハノイ出身で、教科書に出てくる単語もベトナムの共通語とされるハノイで使われる単語でした。その後、ベトナム在住時代は8年間ずっとホーチミンでしたので、徐々に南部訛りになっていきました。しかし、ホーチミンで暮らす間も、プライベートでは北部出身者に囲まれていたので北部弁が抜けきることもなく、北部南部混じりになりました。
プライベートの時や、仕事でも方言がさほど影響しない時にはアクセントについてあまり意識しませんが、被疑者接見や調査などの時には通訳の対象者の出身に合わせて、通訳時のアクセントを寄せるようにしています。そうしなければならないという訳ではないのですが、なんとなくアクセントを寄せた方が、相手との距離感を縮められるような気がするからです。
ホーチミン市内の大学院で修士論文発表をした時に面白いことがありました。発表を終えると、1人の先生に「君のベトナム語は北部アクセントだけと、ハノイではないね。旧Hà Nam Ninh省(現Hà Nam省、 Nam Đình省、 Ninh Bình省)辺りの訛りがあるね」と言われたのです。私がプライベートで接する人たちはまさにこれら3省の出身者が沢山いたので、影響を受けていることは確かでした。
日本語はというと、家族内で飛び交う方言がバラバラです。母は「ひ・し」を時々間違えるほどの江戸っ子で、3姉妹(私は末っ子)は生まれ育った場所と現在住んでいるところが全員違い、伊予弁や和歌山弁、義兄は山口弁、姪は金沢弁を話します。私自身は就学前は片言の日本語(共通語)、その後は松江弁、金沢弁に変わり、今はちょっと訛った共通語といったところでしょうか。言語学や方言研究の専門家にお話を聞いた面白いだろうなぁと思ったりします。
写真は「スプーン」の対訳。アクセントではないですが、ベトナムでは南北で使う単語が異なることも多々あります。スプーンは北部ではThìa、南部ではMuỗngと呼ばれます。ちなみに私はMuỗng派。
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