センター試験 国語の評論に「翻訳をめぐる七つの非実践的な断章」

1月19日(土)〜20日(日)に2019年度大学入試センター試験が実施されましたが、1日目の国語の評論にロシアやポーランド、スラヴの文学を専門に研究されている東京大学 沼野充義教授の「翻訳をめぐる七つの非実践的な断章」が出題されたのをご存知でしょうか。昨今はAI化や自動翻訳が進み、近い将来に通訳者や翻訳者はいらなくなる⁉︎という話題もよく耳にするようになりました。こうした背景から、センター試験にも翻訳をテーマにした問題が出されたのかなぁと思いました。



私は翌20日(日)のニュースや新聞で報道されたセンターの解答速報でこの問題を知り、早速読んでみました。試験本番なら速読して素早く解答しなければならないでしょうが、今回は要所要所で読み返しながらじっくりと、「読み物」としてとても楽しくて興味深く読みました。
 
ここで沼野先生は、「翻訳とは何か?」ということに言及されています。ある文章を元の言語で読むのと翻訳された言語で読むのは同じ体験をしたと言えるのか?近似的な体験なのではないだろうか。「よろしくお願いします」のように外国語に翻訳することが不可能だろうと思われるような慣用句をどうするか-直訳した上で脚注をつける方法や、読み手の文化的に一番自然な言葉に言い換えることでこなれた訳文にする方法…。そもそも正確な翻訳とは何か?などなど。


翻訳者の端くれの私もこのような「翻訳とは何か?」について自問自答の日々ですが、永遠のテーマとして考え続けることが大切なのかなぁと思います。また、異なる言語の狭間で翻訳することができない単語も一度考え始めると、出口の見えない迷路に入ったような感覚になることもありますが、それが翻訳の奥深さでもあるのかもしれません。



「翻訳をめぐる七つの非実践的な断章」の本文は東進ハイスクールのホームページで解答速報とあわせて掲載されていましたので、ご興味のある方は、以下にリンクを貼っておりますので、そちらからご覧ください。


翻訳に興味がある方や外国文学の訳書をよく読まれる方などには、「翻訳できない世界のことば」エラ・フランシス・サンダース (著)   前田 まゆみ (翻訳) という本も興味深いと思います。世界各国で使われている感情や状態を表す言葉で、そのニュアンスを外国語に翻訳することができない言葉たちが集められた1冊。言葉ひとつひとつの解説を読みながら情景を想像すると、「あぁ、確かに言葉にはできないけど、この気持ちは分かる気がする…」と感じる言葉や、「へぇ~、こういう感覚は分からないけど、この国で暮らす人ならでは!っぽい」と感じる言葉が盛りだくさんです。是非。

東進ハイスクール センター試験2019 国語問題 | 解答速報2019 :

「翻訳できない世界のことば」エラ・フランシス・サンダース (著) 前田 まゆみ (翻訳) :

ベトナム語通訳翻訳者 田崎広野

ベトナム語通訳翻訳者 田崎広野

フリーランスベトナム語通訳翻訳者 田崎広野の活動を紹介する個人ページ Trang cá nhân của Tazaki Hirono: Phiên dịch viên Nhật - Việt tự do

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