二口女(ふたくちおんな)になりたい

「二口女」や「食わず女房」という名前を聞いたことがありますか?どちらも顔の他に頭にも口を持つ女性の妖怪で、タイトルの「二口女になりたい」はこの数週間の私の叶わぬ願望です…。実際のところ二口女でも食わず女房でも良いのですが、要は「口が2つ欲しい!」のです。。

仕事や勉強、アルバイトやパートに家事育児、はたまた趣味の活動など…忙しくて「体が2つ欲しい」と思ったことはありませんか?

フリーランスをしていると、本業の他に営業や事務仕事も自分でこなさなければなりませんし、家族と一緒に暮らしている人なら自分以外の家族の諸用や体調次第でスケジュール調整が必要にもなります。私自身、通訳で出かける日と翻訳の納品予定日が重なったり、既に通訳の仕事が入っている日に別の通訳の仕事でお声掛けいただいたり…。翻訳の納期が迫っている時に子供が寝込んだり…。体が2つ欲しい‼︎と思うことはよくあります。

その他に私は通訳業務中に「口が2つ欲しい…」と思うこともしばしば。。通訳のお仕事の中には会食や懇親会での通訳も多いのですが、私はこういう時にお茶だけ口にするようにしています。もちろん通訳者によってはビールを飲んだり他の出席者と同様に食事を摂る人もいますが。
 
よく現場では「通訳さんもどうぞ食べてください」とお皿に料理を盛って下さったり、ビュッフェの料理の方へ誘導してくださいます。ところが「それじゃあちょっとだけ…」と、いざ何かを口に入れたり移動しかけた時に限って思いもよらぬ方向からお声が掛かったり会話が始まったりするので、最終的にいつでも喋り始められるように口の中は空っぽにしておくに尽きる!という結論に至りました。
  
しかし、理由はそれだけではありません。実は私は家族や友人、職場でも食べるのがすごく遅いです。何で遅くなってしまうんだろうと真剣に考えたことがあり、どうやら私は人一倍よく噛んで食べるので飲み込むまでに時間がかかるということが分かりました。。。
  
会食や懇親会ならばお茶でその場をしのげるのですが、長期の案件となると通訳対象者と毎日食事を共にすることになります。長期の場合はだいたいお昼ごはんを一緒にいただきますが、出張になると朝昼夜が一緒となります。現場によっては「ご自由に」という形をとって、通訳対象者と私だけで食事をすることもあり、この時は当然ベトナム語で他愛もない話をしながら食事をします。
  
一方で、「海外からのお客様を放っておいてはならない、手厚いおもてなしを」という形で、毎度の食事を一緒に席を囲む現場もあります。この時の食事休憩は私にとってはもはや休憩ではなく業務になるわけです。1日を通して人の2~3倍喋らなければならないので頭もフル稼働ですしお腹もとっても空きますから、会食のように食べないでいるわけにもいきません。目の前に美味しそうな食事があっても何が何やら…、取り敢えず隙を見計らいながらポンポン口に入れては高速で咀嚼します(汗) 
  
すごく頑張って早く食べても(私の感覚ではほぼ丸のみに近い)元々食べるのが遅い上に人より多く喋るのでお皿はなかなか空かず、気付けば食後のコーヒーが配られていたり。。。みなさんをお待たせすることはできないので、そんな時は勿体なくても食事を残し私もコーヒーに移ります。なので、食べたようでもあまり噛んでないので満腹度が低かったり、実際にほとんど食べられなくてお腹がペコペコのまま食事終了になったりすることもあります。
  
先日お話を伺った医療通訳さんは常にバッグにカシューナッツを入れていると仰っていました。医療通訳は待合時間が長かったり決まった食事休憩がない場合も多いので、試行錯誤の結果カシューナッツに行きついたとのこと。カシューナッツは高たんぱくで手軽に口に運べますし、ナッツ類の中でも柔らかいのでポリポリ咀嚼音がしないところが良いそうです。建設的な考え方をされるその医療通訳さんに比べて私ときたら…二口女になりたい…という。。。
  
因みにお茶でやり過ごす会食の帰り道はラーメンやつけ麺、とんかつ定食、レバニラ炒め定食などなどガッツリ食べて家路に着くことがほとんど。1日中頭を使うと、夜は異様にしょっぱい料理が恋しくなります。


写真はWikipedia 「二口女」より。この二口女ですが、単に口が2つあるものとばかり思っていたところ、検索してみると髪の毛が手のように食べ物を後頭部にある第2の口に運んでくれるそうです。なんて便利(笑)‼

ベトナム語通訳翻訳者 田崎広野

フリーランスベトナム語通訳翻訳者 田崎広野の活動を紹介する個人ページ Trang cá nhân của Tazaki Hirono: Phiên dịch viên Nhật - Việt tự do

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