国際ベトナム語能力試験 プレビュー ③

2021年2月11日(木・祝)に実施された『国際ベトナム語能力試験』(iVPT) を①②③の3回に分けてプレビューしています。国際ベトナム語能力試験 プレビュー ①では会場と受験者層についてまとめ、国際ベトナム語能力試験 プレビュー ②では本題の試験内容について、聴解・語彙・文法・読解の傾向と対策を紹介しました。国際ベトナム語能力試験 プレビュー ③では主に筆記(短文と長文の作文)と口述における私個人の失敗談、試験全体の印象のまとめを紹介します。


【作文】

筆記試験は指定された1単語を使って短い文章を作る設問が8問、複数の単語を盛り込んで100単語以上の長文を作る設問が2問ありました。


短文作文の8問で指定された単語は比較的易しかったような気がします。全ては覚えきれませんでしたが、"cẩn thận/慎重に(な)"、"khuyến khích/勧める、奨励する"などがありました。そして私が作った文章はうろ覚えですが"Thời dịch như thế này chúng ta phải rửa tay cẩn thận/このような感染症のご時世、私たちは慎重に手洗いをしなければならない"、"Bác sĩ khuyến khích bệnh nhân nên vận động nhiều hơn/医者は患者にもっと運動をするよう勧めた"です。こういう設問は瞬発力というか発想力が大事ですね…単語自体は易しいのにいざ文章を作ろうと考えるとなかなか文章が頭に浮かびませんでした。。


長文作文の2問で指定された単語もテキストに出てくるような馴染みのある単語でした。1問目に指定されていた5つの単語は(私の記憶が確かならば…):thông minh(頭が良い/聡明な)、chăm chỉ(勤勉な)、học tập(勉強する/学習する)、kiến thức(知識/見識)、sáng tạo(創造する)。私は確か…「学生にとって勉強することはとても重要なことである。真面目に(勤勉に)勉強し知識を高めることで創造性が豊かになり、物事の処理能力が高まるだけでなく、他人には考え付かないようなアイディアを思いつくことにもつながる。成績が優秀でテストの点数が高い人はよく『頭が良い』と言われるが、私が思う『頭が良い』人というのは生活能力があり、知恵のある人である。そうした人を私は尊敬する…」のような内容をベトナム語で書いたと思います。


2問目の5つの単語は:Thời tiết(天気/天候/気候/気象)、nắng nóng(日差しが強く暑い)、mưa to(大雨が降る), trách nhiệm(責任), phòng tránh(予防する/防止する/防ぐ)だったはず。私が書いた文章は確か…「近年の気候変動により日本では昨年の夏に異常気象のような猛暑となった。また南部の九州地方は大雨が降り人々の暮らしに大きな影響を及ぼした。その際に政府と地方自治体は責任を取り被害に遭った住民の支援を行った。今後も気候変動による異常気象は続くと考えられ、私たちはいかに被害を防止するかを考えなければならない。家を購入する際には河川に近い場所や地崩れの危険がある場所は避けた方が良いだろう」のような感じだったでしょうか。


作文試験での私の反省点はベトナム語を手書きすることに慣れておくべきだったということろ。限られた時間の中でそれなりの長さの文章を手で書くことを練習しておいた方が良さそうです。私は学生時代こそノートを取ったりベトナム語のテストでも筆記がありましたが、今はパソコンやスマートフォン、タブレットなどへキーボード入力することがほとんど。通訳の仕事では手書きもしますが、それは自分さえ読めれば良しとした殴り書きのメモです。端末でキーボード入力していると単語候補が出てきますしスペルミスも指摘してくれます。記憶があいまいな時にはオンライン辞書でスペルを確かめたり。


答案用紙はA4サイズに罫線が引かれていました。100単語というのがどのくらいの長さなのかを把握しておくことも大切です。試験中にいちいち数えている時間はありませんし、おおよそ紙のこの辺まで書ければOKくらいの目安が欲しいですね。私はなんとなく1行目を書いてみて1行10単語くらいかなぁと思ったので、少なくとも10行は書こうと決めました。しかしながら普段ボールペンしか使わないので2B鉛筆で書くと、鉛筆はすぐにちびてくるし手書き文字が恥ずかしいほど汚くなりました。スペルも声調記号が抜けていたりするところがたくさんあったんじゃないかなぁと思います。作文の内容も1問目ではthông minhが、2問目ではphòng tránhが余ってしまい無理やり文章を付け足した感じになり、全体を通して読んだらだいぶ支離滅裂になってしまいました。という感じで高得点は期待できなさそうです(涙)


【口述】

口述はパソコンルーム?に移動し、受験者1人ずつヘッドセットをつけて指示に従い自分の声を録音する形式の試験でした。アナログ人間の私は英検のような面接式の口述試験なのかなぁと勝手に想像していて、試験時間10分間で約30人がどうやって受けるんだろうと不思議に思っていました。最近の語学試験はだいたいこんな感じなのでしょうか⁇


1問目は模擬問題にもあるように問題用紙に描かれた4コマの絵を30秒間見て、その後与えられた1分間に話すというもの。1コマ目は花嫁カー(ベトナムではxe hoaと呼ばれ新郎が新婦宅まで車で新婦を迎えに行く時に乗る車)、2コマ目は新郎新婦が両親(新郎側や新婦側かは不明)に挨拶している場面、3コマ目は披露宴、4コマ目は披露宴後に新郎新婦が出席者をお見送りしている場面でした。


私は絵を見て「へぇ~結婚式かぁ」とぼんやりしてあんまり文章が頭に浮かびませんでした。そうこうしている間に発話時間になったのですが…。受験者は1席ずつ空けて座っておりヘッドセットもつけていますが、周りの声が結構聞こえました。私は後方から"Tranh này là về/この絵は~について"と言っている声が聞こえ、私としたことが思わずその声につられて"Bức tranh này là của một gặp cô dâu và chú rể vào đám cưới của họ..../これはある新郎新婦の結婚式の日の絵で…"と何も考えないままに話し始めてしまいました(苦笑)。その流れのまま、「新郎が新婦を迎えに行き、その後両親に挨拶をして、結婚式をして、終わった後お客さんを見送って~」とつらつら。


あっという間に4コマ目まで説明し終わってしまったですが、周りの受験者はまだ喋り続けてましたし、制限時間にはまだ十分な余裕があり困りました。最後まで言ってしまったし、一度黙っていたのをまた急に補足で喋りだすのも変だし…と黙って発話時間が終わるのを待ちました。後からふと日本語で書かれた受験要項に「絵を見て作話」と書いてあるのを思い出しました。そこで「しまった!<作話>ではなく<説明>してしまった!!」と思ったのですが、ベトナム語で書かれた模擬問題を確認すると"miêu tả lại nội dung/内容を描写"と書いてありホッとしました。


2問目は、"Theo bạn, hạnh phúc gia đình là gì?" だったと思います。準備時間は1分間、発話時間は2分間でした。ここでも私はあまり良い内容が思い浮かばず「家族が健康で互いに慈しみ合い助け合い世話をし合うことができること。当然生活していく上ではお金やモノも必要だが、暮らすのに必要な分さえあれば良く多くは望まない」のようなありきたりなことを述べました。ここでも時間が大幅に余ってしまい、たぶん1分以上は黙って待機していました。


同じ試験を受けられた方にお話を伺う機会があり、その方は時間が足りなかったと仰っていました。1つには私は結構早口、2つには私の家族の幸せに対する思入れが薄い⁉ことが原因で回答時間を持て余してしまったのは大失敗でした。


1問目も2問目も目の前のパソコンの録音画面に時間が表示されていたでしょうから(私はどこを見ればよいか分からなかったのですが…悲)、その時間を意識しながら発話した方が良いですね。この口述試験の採点基準が内容・発音・長さ・語彙などのどこに重きを置いているのか現時点では分からないですが、私が大きく減点されていたら時間配分は重要という可能性は高いでしょう(内容・発音・語彙はたぶん大丈夫だと予想…)。


【全体の印象】

iVPTのレベルBと『実用ベトナム語技能検定試験』(ViLT) の2級を比較すると、iVPTのレベルBの方が易しかったかなぁ…?と感じました。これは得意不得意によって変わってくるかと思いますが、iVPTには単語の並べ替え問題のような確認に時間のかかる問題がないのは私的に解きやすかったです。読解の長文もViLTに比べて少し短かったような…(記憶違いかもしれません!)。ViLTを受験されたことがある方ならお分かりになるかと思いますが、ViLTは問題形式が日本語能力試験(JLPT)と非常によく似ています。また設問に出てくる文章も他の外国語試験にもよくあるような現代社会の諸問題や暮らしの中でのことが多い気がします。


一方で今回のiVPTで強く感じたのは、iVPTはベトナムの生活や文化などの現地事情、地理や観光、歴史や文学が好きな人に有利?な試験であるということです。仮にまだ学習歴が浅く語彙や文法知識が少なくとも、現地の様子や知り合いのベトナム人を頭に浮かべると回答が見えてくる設問が多いと思います!そのため、iVPTの試験対策は基本的な構文や単語は市販のテキストで勉強しつつ、ベトナムという国について情報収集することも大いに役立つでしょう。知識として日本語で情報を収集し、ベトナムのネットニュースなどで短めの時事ネタを読んだり、民話を検索して読んだり。


聴解は北部の声調で録音された市販テキストの付録音声などで練習したり、聴解&読解 おすすめの学習方法(中・上級)聴解 おすすめ学習方法(中・上級)で紹介している方法で練習するのもおすすめです。


作文については現在まさに学習中の方は問題ないかと思いますが、既習者の方やお仕事でベトナム語を使うけれど書く時はもっぱらパソコン作業という方は、手書きの練習も大切だと実感しました。これはベトナム語の試験に限らず、普段の生活でも久しぶりに手書きすると日本語でさえ思うように字が書けなかったりしますよね。


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①②③の3回にわたり国際ベトナム語能力試験のレビューをしてきましたが、いかがでしたでしょうか?今後この試験を受けてみたいなぁと検討されている方、今回受験された方で再受験を予定されている方のご参考に少しでもなれば幸いです。レビューは私の記憶(あまり頼りにならない)と主観によるものですので、誤りやご意見等ございましたらお知らせください。その他、受験された方の感想などもお寄せいただけたら嬉しく思います。


#国際ベトナム語能力試験

ベトナム語通訳翻訳者 田崎広野

フリーランスベトナム語通訳翻訳者 田崎広野の活動を紹介する個人ページ Trang cá nhân của Tazaki Hirono: Phiên dịch viên Nhật - Việt tự do

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